片山立:目的手段体系に基づく起業家の意思決定過程の可視化,日本創造学会第39回研究大会論文集,vol.39,pp.69-76,2017/9/9
- タイトル: 目的手段体系に基づく起業家の意思決定過程の可視化
- 著者: 片山 立
- 誌名: 日本創造学会第39回研究大会論文集
- 巻: 39
- 開始ページ: 69
- 終了ページ: 76
- 出版年月: 2017/9
- 要旨: 古典的なマーケティング理論に基づく経営においては、新製品や新サービスの機会は発見されるものであり、新市場は満たされていない潜在的なニーズを探索し、目的とするセグメントを選択する立場をとっている。このアプローチはコーゼーション論理と呼ばれる。これに対しサラスバシーらによって提案されたエフェクチュエーション論理においては、熟達した起業家は、手段からスタートし、「これらの手段を使って何ができるだろうか?」という問いを自分に投げかける。すなわち手段から目的をデザインする。 また、企業がベンチャーから中堅企業、大企業に発展する過程では、熟達した起業家や経営者はエフェクチュエーション論理とコーゼーション論理を巧みに組み合わせて活用し意思決定をしている。 本論文では、このような熟達した起業家や経営者が効果的な意思決定を行う過程を可視化する手法を提案する。そのため、まず拡張Value Graphという表記法を導入することにより、起業家の思考内容を目的と手段の視点からモデル化する。 次に、起業家や経営者の意思決定過程のモデルとして、①現状の認識、②当面の目的の設定、③当面の目的を達成するための手段の生成、④手段の実行、⑤新たな目的または新たな手段の獲得という基本的な思考プロセスを導入する。これによりエフェクチュエーション論理やコーゼーション論理における個別のヒューリスティックスを適用する前と適用した後で、ステークホルダの目的手段体系がどのように変化したかを可視化することで、ステークホルダの意思決定過程を明確に表現できることを示す。 さらにこのモデルを用いることにより、複数のステークホルダが自分の目的手段体系を交換することにより、創発が発生する過程を複数の拡張Value Graphの合成や変形操作で記述できることを簡単な事例を用いて示す。